一期一会のお茶

和紅茶というジャンルは、個人レベルでの生産が主なので、その年の気候のみならず、偶発的な状況、例えば生産者の体調の良し悪しであるとか、ご近所の義理事があったとか、とっさの閃きであるとか、そういった要素の影響を強く受けている気がする。

良くも悪くも品質が不安定ともいえるが、同時に数年に一度の傑作に出会える機会もまた多い。

この一期一会感こそが、和紅茶の魅力だと考えています。

もちろん、海外でもそういった要素はあるのですが、大規模な茶園での製造からオークションを通じて入荷してくるお茶と、家族経営から直に品物が届く和紅茶では、その偶発的要素の入り込む容量がまったく違うんですね。

さて、そんな一期一会的な紅茶であった「嬉野紅茶さえみどり」が、ついになくなりました。ネット上ではすでに売り切れていましたが、店舗に残っていた分も、私がこっそり自分用にとっていた分も、綺麗さっぱり無くなりました。

出会いの嬉しさもあれば別れの寂しさもひとしお。去年の私のお気に入りでしたが、今年は同じものは作る事が出来なかったそうで、もちろん、来年作れるかどうかはまだ判らない。出来たときもっと美味しいものが出来るのか、そうでもないな、という出来になるのか、はたまた全く別物になってしまうのか、まったく予想はつきません。

虫害葉を利用したお茶ですが、それを利用する技術がまだ未完な中で作られたお茶。ゆえに台湾の当方美人のような洗練された香味ではない、が、色んな特性や状況が入り混じり、何とも言えない味わいを作っていました。

さらに、熟成によって個性が伸びていくお茶だったようで、今年売り切れ直前には4~5煎飲んでもその個性をしっかり出してくれていました。そうと知ってればもっと大切に飲めばよかった・・。

思いがけない出会いに恵まれるのが和紅茶の魅力。
しかし、そんなお茶との別れが今回は妙に寂しい。

秋だからだろうか。

と、生産者 太田裕介さんへの恋文、あるいは来年へのプレッシャーをここで発表するのでした。