茨城県猿島(さしま)の吉田正浩さん。幻の品種「いずみ」を使った紅茶で、近年日本の紅茶界で色んな専門家を仰天させた人です。
吉田さんは1839年創業の茶園の後継者で、吉田さんで6代目になられます。茨城にお茶ってあるの?という方もいらっしゃいますが、私自身も恥ずかしながら茨城が茶の生産地という認識はあまりありませんでした。
しかし、猿島という地域は明治時代、日本がアメリカへ緑茶を輸出する際に最初に送られたのは猿島のお茶だったということもあるそうで、量、質ともにしっかりとした産地だったことが分かります。
現在は吉田さんをはじめとする実力派の台頭で産地としての認識も徐々に広がりつつあると思われます。
吉田さんが「いずみ」をという品種を知ったのは、就農前に国立茶業試験場に1年間研究生として勉強をされていた時。萎凋や発酵行程で香りに特徴のある品種に興味に興味を持たれ、研究者の方からいずみの存在を教えてもらいます。平成3年の事であったそうです。
それから挿し木で増やして、茶園になった最初の2005年頃からは萎凋させた香り系の煎茶を作ってらっしゃいましたが、同じさしまの地域で他の生産者さん達が紅茶作りや烏龍茶作りに励む姿に触発され、2012年に紅茶作りを試みられました。せっかく紅茶を作るなら良いものを作りたい。そう思ったときにいずみの事が頭に浮かんだそうです。いずみは紅茶用品種「べにほまれ」の系統を受け継ぐ品種で、その狙い通り優秀な紅茶ができあがり吉田さんはにわかに注目を集めるようになってきました。
その後も製法について勉強と改良を重ね、高品質な紅茶を日本に登場させました。
本来は福岡県で釜炒り茶用品種として作られたこの「いずみ」は、こうして遠く離れた茨城にて復活を果たしました。もはや幻の品種と言われるこのいずみは、吉田さんの様々な施策、研究を経て高級ダージリンのような、清らかでフルーティーな清廉和紅茶として世の紅茶ファンを魅了しています。