梶原さんの名はよく聞いてましたが、紅茶生産者というよりも釜炒り茶職人としてでした。あるとき梶原さんの作った紅茶を飲ませてもらったら。。美味しい!特に余韻に深く残るなんとも言えないミネラル系の余韻はなんでしょう?
芦北の梶原さんのところを訪ねてみました。
梶原さんのいる熊本県芦北町まちは、水俣市の北側、熊本県としてはかなり南部に位置し、平家の落人伝説で有名な山間部人吉市の近くでもあります。当然山は深く、自然がそのまま残っている地域でもあります。
熊本県南部や隣接する宮崎県五ヶ瀬や椎葉村などは昔ながらの釜炒り茶が多く作られ、無名でついでに無愛想でいながら、腕の良い職人がゴロゴロといる印象があります。
梶原さんが釜炒り茶を作っている在来の畑を見てびっくり。その恐ろしい急斜面。ひとたびつまずけば転げ落ちそうな、というのは比喩表現ではなく、本当に危険を感じます。お茶の作業どころか、茶畑の上に行くだけで息が切れてしまいます。お父さんから受け継いだという茶畑は、中にはこぼれ種で勝手に出来た茶畑というものもあり、なるほど野趣に富んだ後味を持つわけだなと感じいります。
しかし、梶原さんのお茶は単に荒々しい田舎のお茶ではなく、清らかで繊細な仕上げを施された清涼感のある釜炒り茶です。そして後味として地力を秘めた滋味がじわじわと湧き上がってくる感じがたまりません。
梶原さんはお茶生産者としては3代目。お茶だけで無くサラダ玉ねぎなども栽培されています。お父さんからお茶を受け継ぎ、2000年頃から無農薬に切り替えられました。
最初は両親にも理解されず大喧嘩もなさったと聞きます。
が、これからの時代、大量生産に向かうか、高付加価値のあるものを作り続けなかれば生き残ってはいけない、と時代を読み取った梶原さんはその環境を活かし高くても皆さんに喜んで頂くお茶を世に出すため、肥料を減らし、無農薬を続けることを貫きました。
紅茶や半発酵茶にも挑戦され、私もそのご縁でこうしてお茶を分けて頂いてます。
紅茶の方も様々な品種がありますし、在来種も作ってらっしゃいますが、当店ではべにふうきを使った紅茶をお取り扱いしています。品種のお茶は通常は土壌の影響が出にくい物なのですが、梶原さんの紅茶は製法もさることながらその土地の力を存分に引き継いでいるとしか思えない余韻があります。見ると茶畑には白い石がゴロゴロ。石灰質の土壌なのでしょうか?珪石ではなさそうですが、梶原さんの自宅周辺の水が非常い硬度が高いアルカリ水なのは間違いありません。
大量生産にはとことん不向きな環境。それを逆手にとりより高品質で梶原さんらしさを追求したお茶を、これからも堪能させて欲しいと思っています。