有名な東海道五十三次にも出てくる、丸子宿からほどない場所にある、村松二六さんの茶工場を訪ねました。
村松さんは静岡で古くから紅茶の製造に携われており、醗酵機の開発、品種の育成、醗酵法の研究など、紅茶製造に関わる全般に造詣の深い方。
また、他の地方の紅茶生産者の皆様とも親交があり、紅茶製造に挑戦したい!という若者には惜しみの無い協力をされている方です。
△私もお手伝いしてきました。
△村松さんと色々ティスティング。
自宅のガレージを改装した茶工場に並ぶ機械は、ほとんどが村松さんの手によって改良が加えられている。
特に萎凋用の層にはこだわりがあり、多くの生産者が苦労している萎凋過程で、品質の高さを維持してらっしゃる秘密がここにある。
萎凋と呼ばれる、茶葉の水分を抜くこの大事な工程で香りが決まる、というのはどの生産者もうなずくところ。ここで均一に風を送り、葉と茎部分の水分を程よく抜く技はやはり村松さんがずば抜けていると思う。
その時の茶葉の状態、時期、天気、品種など、複雑な要素で萎凋の状態も変わるが、どんな状況でも全体に満遍なく風が行き渡るように、ファンの大きさから容器のサイズまで計算されつくしている。
△計算されつくした萎凋層
同じように、葉を揉む揉捻機、醗酵、乾燥に至るまでさすが20年近い経験の蓄積があってこその技。
村松さんの茶畑は「島本農法」と呼ばれるもので、土壌菌のバランスを考えながら理想的な植物の生育状態を引き出すというもの。
村松さんの畑は他の茶畑に比べて葉が密に育っていて、3葉、4葉くらいの下部になっても葉が柔らかい。
村松さんによると、茶の樹の細胞分裂の勢いが活性しているからそうなるのだという。
「茶の樹はとことんイジめて、鍛えてやらんとな。それと、肥料はこれは良い!と思うものがあったら、ちょっとくらい高くても惜しんだらいかんでぇ」
と、豪快に語る村松さんであった。
村松さんの紅茶は一言で表せばバランスの良い、「完成度の高い紅茶」といえる。ゆえに、紅茶を作ったことのある生産者の間で村松さんの紅茶は評価が高い。
国産紅茶のありがちな欠点といえば、青臭さ、生臭さ、全体的な完成度の低さ、埃のような匂い、などがあるが、村松さんの紅茶はそれらをうまく消し去って、ほのかな甘みを伴ったコク深い味に仕上がっている。日本紅茶のスタンダード的な味わいといえるだろう。
数人の生産者と訪ねた時も、科学的な根拠を交えて詳細に指導して下さった村松さん。
今は自宅の近くにある多田元吉の墓の前に「マリコファクトリー」を作り、紅茶の生産、指導に活躍されている。
多くの科学者、生産者、そして海外の技師とも交流されている村松さん、ぜひ今後も日本紅茶の全体的なレベルアップの為、お力を頂けたらと。そう思うのである。
△元気のある茶葉達
△様々な品種にも挑戦中。