隼人について

和紅茶の分類において、香りを重視した作りのものを「清廉」と呼びます。中国茶やダージリンにかなり近い品質を持つ和紅茶もあり、紅茶通ならずとも誰もが喜ぶ高品質な紅茶が多いのが特徴です。

ただ、それ故に簡単に作ることは出来ず、少量高品質な紅茶になるため、価格も高くなりがちで毎日の紅茶、とは中々いかないのが現状です。隼人は毎日飲める、親しみやすい清廉タイプの和紅茶を目指して作りました。

この紅茶のベースになっているのは鹿児島県で生産された紅茶ですが、最初、私にサンプルが来たとき「ダージリン風仕上げ」とだけ書いた袋に入ってました。開けると見た目は粗め。茎も入っている状態で、「おいおい、単に発酵が浅いってだけでダージリンっていってもらっちゃ困るよ」」と失笑しかけたものでした。

ところが、飲んでみるとこれが美味しい。少し火香が強いものの、キレもよく、香りも上々。何より後に残る甘い味わい。後に気がつきますがこの香りの中には高貴な花香も隠れていまして、それが豊かな後味を膨らませるのでしょう。

少々不十分なところもあったのですが、すぐにそれを補うブレンドが思いつきました。火香がとがり過ぎず、香りが豊かに広がり、くどさの少ない和紅茶ブレンドが完成。

私の目標だった、手軽に飲める清廉紅茶を作る事が出来ました。

ただ、少し問題が。。。
茎がやっぱり多すぎる。茎の部分は一部の人の間では香りや甘みを増すので美味しい、と認識されていますが、普通には異物扱いです。実際に、茎が多い紅茶というのは酸味などの雑味を伴い、品質は低い物がほとんどです。美味しいとは言え、やっぱりイメージは良くない。茎は取り除こう。

そう思い、茎部分を取り除ける機会にかけ、葉っぱだけの状態にしてみました。重量がかなり減る分、コスト高になりますが、仕方ない。取り除いたきれいなお茶を飲んでびっくり。あまり美味しく無い。。。いや、美味しいのは美味しいのですが、茎が入っていたときの方が甘みが乗って美味しかった・・。
親しみやすさをメインにした和紅茶ですので見た目はどうでもいいじゃないか、という自分と、いやいや、こんな茎の多い紅茶をみんなに勧めたら、誤ったメッセージを発信することになるんじゃないか?という自分との葛藤。

悩んだあげく、茎をちょっとだけ戻すという折衷案。中途半端?いやいや、結果良いバランスになったと思っています。茎の部分というのは味は出にくいですが、香りや甘みを引き出す可能性もあるのでうまくいけば美味しいお茶になります。茎ほうじ茶が甘くて美味しいように。

この茎の部分が香りや甘みを出す事もある。という事が変な風に解釈されて、ただ単に粗くて茎が混じっているだけのお茶の逃げ口上として「この茎がたくさん入っているから甘みを感じるんです」という言葉が使われるようになるとこれまた悲しい。

茎の部分が多く入るという事は、普通に考えれば硬化した葉っぱや枝の部分など、通常は高品質な紅茶を作るのに適さない部分を多く含んだ原料茶葉だったという事。茎が枝があまりに多い紅茶はやはり
香味もぼやけるのが普通。品種や製法、仕上げなどコンセプト等がきっちりはまると茎を多く含んでも美味しい、むしろ良い方向に向く場合もあるという事。

隼人はその良い方向に向かっている和紅茶の一例ということで、すっきり感とほのかな甘みと豊かな香りがほどよく楽しめる和紅茶です。

ちょっとホッとしたいときの和紅茶としてお楽しみ下さい。