草薙。世間的には2018年11月に開催されました、国産紅茶博覧会で始めて皆様にご紹介させて頂きました。テーマは「国産紅茶のスタンダード」というテーマでしたが、私がその時にしきりに「そんなに美味しい紅茶じゃ無いですよ」みたいことを言っていたので、随分と自虐的なコメントだなと思った人もいたようです。
ただこの草薙、私の念願の夢だったブレンドでもありまして、構想的には数年、商品化に1~2年かかった商品です。ネーミング考えるのも同じくらいの時間がかかりました。結局普通の名前になったのですが。
発売以降、おかげさまでご好評を得ていまして、発売して早速品薄の気配を漂わせています。この美味しすぎないブレンド紅茶が必要とされるのは理由があります。
近年、和紅茶人気の高まりと共に品質も上がり、海外の有名産地にも劣らないような品質の和紅茶も登場してきました。ただ、品質が上がるとどうしても製法も難しくなり、少量で高価格になってしまいますし、淹れ方にもコツが必要だったり、一般の方が認識している紅茶とは違った方向性のもの(極端に発酵度が浅いダージリンのフェースとのようなものなど)になってしまいますので、初めての方にはちゃんと説明があった上で飲んでもらわないとこれが単に日本で作ったものだから緑茶みたいになるのかな?くらいの認識で終わってしまうことになります。
しかし、和紅茶の裾野が広がった事で、かつては一部の紅茶専門店が扱っていた和紅茶も普通の町の喫茶店やホテルなどでも地元のものだけでなく様々な産地の和紅茶が飲めるようになってきました。
それは大変良いことなのですが、何しろ飲食店は忙しい。料理作って、デザート作って、レジもしながらではゆっくりお茶を淹れる時間も、この紅茶の特徴はですね。。。とお客様にゆっくりお話しする時間はほとんど無い。有名なホテルでも、水から沸かした沸きたての熱湯を使って紅茶を淹れる、という紅茶の基本をやれているところはほとんど無い状態。保温したお湯か、お湯の出るサーバーからの熱湯を使っているのがほとんどでしょう。
良い紅茶であるがゆえに、その魅力が発揮されず、こんなもんか。。くらいの感想で終わってしまうのはもったいない。しかし、専門店でない飲食店にそれぞれの和紅茶の特徴をしっかり引き出して、というのも無理な注文。
加えて、町の喫茶店にくる、いわゆる一般のお客様は、ストレートよりもロイヤルミルクティーやチャイなど、アレンジミルクティーを好む傾向にありますが、これまた高品質な和紅茶、特に清廉タイプの和紅茶となるとミルクティー向きの紅茶では全く無い、というのがほとんどです。日本でミルクティー向きの紅茶を作る生産者はかなり限られています。それは技術的な問題というより、日本の生産者さんがお茶にミルクを入れて楽しむ、という事に慣れていない、もしくは抵抗感があるために、初めからミルクティー向きの紅茶を、というよりもストレートで美味しい和紅茶を作ろうとするからです。
高品質な紅茶が増えてくるのは和紅茶全体にとって素晴らしいことなのですが、同時に初心者や専門店でない飲食店で楽しめる、いわゆる間口を広げるような紅茶もまた同じように必要。これはどちらが優れている、とかではなく車の両輪のようなもので、同時に発展していかないと文化とはなり得ません。頂上が高くなっていけば、それに合わせて裾野は広く。そうすることによって市場としてのボリュームが増えてくる訳です。裾野ばかりで上が無ければただのペットボトル飲料と一緒ですし、裾野が狭くて一部の人だけが喜ぶような世界では作り手も飲み手も増えること無く、結果全体のレベルは上がっていきません。
この草薙は和紅茶に馴染みの少ない人が楽しめる紅茶、飲食店としては扱いやすく、ロイヤルミルクティーなどのアレンジミルクティーに使いやすい、様々な場面で楽しめる和紅茶の裾野を広げる目的で作った紅茶です。
高品質な、ストレートにこだわる人にはもっと他にいいものがありますので、限定生産紅茶の方をお探し下さい。