当店も含め、日本で作られた紅茶の事を和紅茶。という呼び方が一般的になってきました。
これを最初に広められたのは、石川県の赤須治郎さんという方ですが、国産紅茶、地紅茶などという呼び方もあり、その時々で呼び名を変える場合もあります。
時折、「どれも違うものなんですか?」と尋ねられることがありますので、違いをお知らせしておきます。
まず、基本的に物としては同じです。国産紅茶も、和紅茶も、地紅茶も、おなじ「日本で育てられた茶の葉を摘み取り、日本で加工された紅茶」であるという事が前提になります。
現実的には無い事ですが、「海外で摘み取った葉を日本で加工したもの」とか、「日本の葉だけど、加工は海外でしたもの」などを和紅茶として販売することは、私の知る限りはありません。
やったとしても膨大な手間とお金がかかるだけで、何のメリットもないでしょう。
そういうわけで、国産紅茶=原料から製造まで日本で行われたもの、という事は間違いありません。そういう意味で「国産の紅茶」で国産紅茶。これは分かり易いですよね。
では、和紅茶、地紅茶は?
これは、「和食」、「郷土料理」という風に置き換える事ができます。
「国産」という場合、それは単に原料がどこで作られたか?というトレーサービリティの面でのお話しになります。
「国産品」という意味です。
それが、「和食」となると、またイメージが違いますよね?
和食という響きの中には、器であるとか、食べ方であるとか、思想であるとか、
そういうすべての物が含まれてくるはずです。
「和紅茶」と呼ぶとき、それは作る人の思想や、楽しむ人の感じ方、その存在意義まで含めての「日本の紅茶」という事です。
日本のお菓子に合わせて欲しい、皆さんの使っている急須で淹れて欲しい、とイメージするとき、私は和紅茶という言葉を使います。
最後に地紅茶。これは「郷土料理」に相当すると思います。
日本の各地には、それぞれの歴史風土に応じた料理が存在します。そして、それは必ずしも、全てが理にかなっているというわけではなく、美味しいものばかり、という訳でもありません。
単に、それしか選択肢がなかったから残っていたもの、というものもあります。
しかし、そこには地元に人だけの事情や息遣いや、思い出が入っているものです。
地紅茶は日本のそれぞれの地域で作られた、ローカルな紅茶です。
その地方の野菜や果実とブレンドしたものや、欠点を補うために紅茶の通常の作り方からは外れた手法で作られる場合もあります。
しかし、それがその地元で受け入れられ、喜ばれ、受け継がれているものであれば、
それは誰に文句を言われる筋合もない、立派な「地紅茶」と呼べると思います。
単に奇を衒って緑茶より高くうれそうだから、という理由で粗製乱造された紅茶と、
常道からは外れているけど、その地で愛されている地紅茶。
その違いは何か?
明確な基準はもちろん存在しません。が、数年後にそれが続けれ、求められているかを見れば答えは簡単にでるでしょう。