農薬、有機肥料等への危険性について

農薬は危険?有機栽培は危険?

食の安全、環境への配慮などから無農薬のお茶をお探しの方も多いでしょう。当店の商品はほとんどが無農薬、最低でも減農薬の茶葉を取り扱いしております。安全性という事もありますが、大きな理由は、美味しい紅茶を探していくと、基本的には無農薬や減農薬になってしまう、という事実が大きいです。
農薬が味を落とす、という事ではありません。お茶によってはある程度ストレスから守ってあげた方が良いお茶もあるでしょう。
ただ、紅茶の場合は茶葉の防衛本能を利用して香りを引き出したり、過剰なうまみ成分が発酵を阻害したりするので、お茶を必要以上に甘やかしたり、栄養を与える必要がない、むしろしない方が良い、という基本があります。無農薬のお茶を作ろうと思ったら紅茶が適していた、という理由で紅茶作りをされている方も多く、紅茶がそのような製法に適しているのが分かります。

さて、その上で農法に対する安全性について私なりの見解を述べていこうと思います。当然、私は農薬や病理に素人ですので、何系の農薬がどんな危険があるとか、どれが問題ある、など私が語ることは出来ません。ネットで情報を拾ってくることは可能でしょうが、そんなコピペの知識は何の役にも立たないでしょう。検証することも出来ませんし。

ただ、私が信頼する農家さん達が、何故無農薬をするようになったのか?それを伝える事は出来ます。そして、私の知る生産者さん達。それぞれ微妙に考えが違う、という事も事実もここで伝える必要があります。

全ての考えを紹介していく事は出来ませんが、いくつか紹介していきいますと、

・自分自身、そして虫や環境への負荷が大きいため農薬を使いたくない。

農薬は使用期間や使い方をちゃんと守れば、口に入れた人が害を及ぼすような事はない。という考えの人が現在はほとんどです。農業の現場の人は、例え無農薬栽培の人であってもそう思っている人も多くはその考えです。では、なぜ無農薬のお茶を作るのか?第一に使う自分が危険という事。嬉野紅茶の太田さんのように、若いときに自分自身が農薬中毒で体を壊した、という経験があるように、農薬を使うとどうしても捲く時に飛散し、自分の目に入ったり吸い込んだりします。当然体に良いことはありません。
それと、農薬を使う以上、そこに住む生物は多くが死滅します。特定の生物がいなくなれば自然環境は崩れ、結局自分の土地の環境が崩れていく事になります。自然と共生する生産者さん達にとっては自分のせいで環境が変っていくのは苦痛な事です。
除草剤もそうで、農薬よりも除草剤の方がタチが悪い、農薬は使うときはあるけど除草剤は使わない、という方もいらっしゃいます。雑草に対して除草剤を使わず畑を管理するのがどれほど過酷で重労働か、農業に少しでも関わった人はよくご存じでしょう。それでも環境の為に安易な手立ては取らない。我々のように農業に従事していない人間の想像を超える強い心身がないと継続出来ない事です。

・お茶の力を引き出す為、農薬を与えず環境のバランスとお茶の防衛本能に任せた農法が良い。

力のあるお茶とはどんなお茶か?一言で言うのは難しいですし、とても難解な部分でもあり私も正しく理解出来ているかどうか自信がありません。ただ、渋みや香りが強い、というだけで無く、味はおとなしくても力のあるお茶というのは確実に存在します。シンプルな味でも飽きが来ず、劣化も遅く、なぜかまた飲みたくなって体が温まってくるような感覚を持ったお茶です。
そのようなお茶を作るには、やはりお茶を甘えさすぎず、肥料や農薬を減らした方が不思議な味わいを持ったお茶になります。化学肥料も有機肥料も、与えればうまみは出ますが、それはアミノ酸の味。そうではなく、高級なワインや中国茶が持つような、体の中からじわっと感じるような甘み。それは大地のミネラルの味と表現されますが、そのようなお茶を作るためにあえて無農薬、無施肥に挑戦されている方もいます。肥料でコントロールしなければ、成分はその土地から生まれた物。つまり、その土地本来の味であり、誰もまねの出来ない味が表現される事になるわけです。農薬や除草剤は地力を弱めますし、肥料はコントロールされた、言ってしまえばどこでも再現出来るお茶になってしまう、というわけです。

・無農薬でしか表現できない味が出る

お茶の香りは様々な要因で生まれますが、ストレスに対する抵抗によって生まれる香味というのが存在します。そのようなお茶を作る為には、無農薬、その他の条件で、お茶の防衛本能を高める必要があります。美味しいお茶の理想を目指した結果、無農薬という選択が出来たという訳です。実際、紅茶や烏龍茶を研究していくと、無農薬と無施肥にたどり着いた、という生産者さんを沢山知っています。

・その他
なんとなく生き物殺すのは嫌いでね。。。
結局農薬をまいても毎年害虫は来るし病気にもなる。ほっておくとお茶の方が自然に抵抗力を付ける。最低限のお手伝いさえすれば、自分で直っていくんだから、高いお金出して農薬を買うのが馬鹿馬鹿しくなった。。。
なんとなく農薬へ不信感がある

皆さんそれぞれ理由はあります。一つだけで無く、色んな考えや要因があって、その人の人生観も含め、総合的に考えて無農薬や自然栽培を選択している、というのが皆さんの正直なところだと思います。無農薬栽培の為に紅茶を作る人、美味しい紅茶の為に無農薬に切り替えた人。立場は色々ですが、美味しい紅茶には過剰な農薬や肥料は良い結果にならない、というのは間違いない事実のようです。
美味しい紅茶を探していると、自然に無農薬や減農薬にたどり着くのは必然の事、という訳です。
人間も重い病気になれば薬を飲むように、全ての場面において無農薬が良いとまでは私は言い切れません。皆さん生活がかかっているのでなおさらです。ただ、美味しい紅茶になる、ということ、そして環境への負担、生産者さんへの負担が少ないこと。この二つに関しては間違いの無い事実である、という事だけは私が自信をもって言い切れます。

最後に有機肥料の事。
有機栽培を危険視する人の根拠は多くの場合「硝酸体窒素」の問題と思います。簡単に言えば窒素分を含む肥料を沢山与えると葉っぱは大きくなるし、色も緑が強くなるし、うまみも出て良いことなんだけど、発がん性物質を作り出してしまって体には良くない、という事です、窒素を沢山あげることで、河川も汚染されます。近年は緑茶の産地でも河川を守るため過剰な肥料は良くないとする動きが増え、昔ほど過剰では無くなってきているようです。当店の製品の中には有機JAS認定の生産者さんが沢山いらっしゃいますが、化学的なものを使用していない、という意味での認証であり、有機肥料分を過剰に与えている方はいらっしゃいません。理由というか根拠は簡単で、前述の通り、肥料が過剰にはいった紅茶は確実に香味が落ち、そもそも仕入れたいと思うお茶になりません。皆様が無農薬無施肥か、それに近い製法をされていますので、紅茶に関しては、(品質のよいものに関しては)窒素過多の心配はされなくて良いでしょう。